ショート✕ショート -小荷駄隊-

個人的な書物。ショートショート

ありふれた日曜日

 いつもと変わらない日曜日。エム氏は、いつも通り何かを探している。
 普段と変わらぬように行動しているが、時に、すれ違う人をメガネの影から横目で気づかれないように観察している。

 エム氏は、とても特殊で高価な高性能のメガネ
をかけている。フレームの横のボタンを押すと、熱感知メガネに早変わりするし、ボタンを2回押すと、写真や動画も撮れるようにもなっている。

 また、エム氏の上着も特殊な装置が付いており、近くの金属を探知できるようになっていて、周辺の匂いも細かく検証できるようになっている。
 
 そんな装備をしながら、エム氏は平静を装い何かを探している。経験も豊富なので、探し物は勘で大体わかるようになっているらしい。もっとも、その瞬間まで“待つ“のが大事な事だと言っているが。

 すると早速、エム氏は気になっていたと思われる1人の女性に声をかけた。
 「事務所でお話しましょう。お済みでないモノがあるでしょう。」

 巧妙化する手口に負けては居られない。エム氏は今日も普段と同じように万引きを取り締まる。

繋がった世界

 ピー博士が数年前に小型の高性能な翻訳機を開発したおかげで、ここ何年かで急速に世界が繋がり始めた。

 その翻訳機のおかげで、旅行はとても便利になったし、テレビも全世界共通になり各国の番組が自由に見れるようになった。

 コミニケーションで苦労することは無くなり、人々は苦労せずにお互いに理解を深められる世界になった。そして翻訳機さえ持っていれば全てがスムーズに事が運んだ。

 そんなある日、ひとりの男がピー博士を訪ねて来た。
 「私はセキュリティ会社の“アール社“から参りました。」
 「セキュリティ会社が何のようだね?」
 「実は、最近我が社に“翻訳をして欲しくない機密事項に関する問い合わせ“が多いため、ある言語については翻訳しないように、翻訳機を改造して欲しいのです。もちろん御礼は弾みます。」
 「なるほど。そういう需要があるのももっともだ。改造しよう。」

 やがて、翻訳機は一新され“翻訳されない言語“が追加され登場した。機密事項の保護を強化するために、何種類か翻訳できないようにピー博士は改造した。

 秘密は保持されたし、人々の生活は便利になったとピー博士は自分の仕事に誇りを持った。

 ところが、そのうち人々は地域ごとに“翻訳されない言語“で会話するようになった。どうやらなんでもかんでも情報が入ってくるのに疲れているようだった。
 
 ピー博士は世の中が便利になるように翻訳機を開発した。ところが、今は世界が繋がる前に逆戻りしている。

 そしてピー博士は「便利は不便なのか。」と力なく呟いた。