青春の代償
アール氏は、最近物忘れが多くなっており、それが悩みの種であった。歳が歳だからとは言い聞かせるものの、忘れ物が多くなったので知り合いのオー博士を訪ねた。
「久しぶりじゃないか。死ぬ前にまた会えて嬉しいよ。どうかしたのかい?」
「最近モノ忘れが激しいんだ。とっておきのクスリはないかい?」
「今ちょうど試作品だが、脳がハタチに成るクスリを開発したところだ。実用はまだ先だがね。」
「そんな素敵なクスリがあるなら直ぐにでもくれ。」
アール氏は早速クスリを飲んだ。
やがて、気分が高揚しはじめ、これからなんでも出来そうなエネルギーが頭を巡った。
記憶力のテストもしたが、まるでハタチの脳を再現しているようだった。
二度目の青春がやって来たとアール氏は喜び、家へと帰っていった。
ところが、翌日オー博士のところに警察が表れアール氏が亡くなった事が告げられた。
なんでも、泥酔して酔っ払い運転をした挙句、電柱にぶつかったらしかった。
オー博士は「精神的にもハタチになってしまったのか。」と呟いた。