うさぎとガメ
うさぎとガメ
あるところに、それはそれは脚の速いうさぎとそれはそれは脚の遅い亀がいました。
亀のガメは何処にでも行けそうな脚を持つうさぎのラビを羨ましがっていました。
しかし、羨ましがっても何も始まらないと、羨ましがる前に何かアクションを起こそうとガメはありとあらゆる本を手に取りました。
ある時はビジネス書。またある時は心理学関連の本。そして何より没頭したのが、科学の本でした。
やがて月日は経ち、ガメは賭け事をビジネス化し、それを仕切る元締めとなりある程度の資産を持つようになりました。
しかし、ラビや近所の人はお金を持ってもその脚じゃ何処へも行けないなとガメをからかいました。
ガメは酷く頭に来てラビに一本松レースの挑戦状を叩きつけ、賭けレースの目玉としてラビに啖呵を切りました。
ラビは癇癪を起こしたガメを気の毒に思ったけれど、この上ないレースだったのでふたつ返事で挑戦を受けました。
ガメはレース前に何やら化学の本と動物図鑑を読み漁り当日まで備えました。
いよいよレース当日。
当然賭けレースを仕切るのはガメの会社でしたが、肝心のレースはラビ1.1倍のガメ100倍という悲惨なオッズになっていました。
ガメに賭けているのはガメ自身だけで、やっとこさ賭けが成立してる状況でした。
ガメはいよいよ居心地が悪くなっていましたが、秘策があるので大丈夫と言い聞かせながらレースを待ちました。
レース直前にラビが悠々と顔を出した時会場が湧き、盛り上がりが最高潮に達しました。
そんな中レースの火蓋が切って落とされ、会場の巨大スクリーンにレースの模様が映し出されました。
レースは一方的な展開で、ラビがあっという間にリードし、ガメは取り残されていました。
一本松へ向かう途中、広い草原がありラビはサービス精神からそこで観客へ向けてパフォーマンスをして会場を盛り上げていました。
ふと草原を見渡すと草原の一画に畑があり美味しそうなニンジンか植えてあり、無駄なパフォーマンスで腹が減ったラビはニンジンを食べ小腹を満たしました。
すると、急に眠くなり一本松手前の草原で眠りこけてしまいました。
会場は一気に盛り下がり、途中にも関わらず帰る人も出始めました。
そうこうしているうちにガメがラビのいる草原を通り越し、一本松のゴールまで到達しました。
ラビはガメがゴールしたあとに目を覚まし、レースの結果を知るとことなりました。
ラビを始め観客たちは面白くありません。レースの不正があったんじゃないかとガメへ追求しますが、後の祭り。
賭けの元締めはガメなので賭けたお金は返ってきません。
やがて、暴徒化した観客はガメのお店を破壊してしまいましたが、肝心のガメは痛くも痒くもありませんでした。
ガメは姿をくらまし、行方が誰にもわからなくなりました。
三ヶ月程経ったある日突然ガメが姿を表した時、人々は驚きました。
ガメの口にはキバが生え、背中にはミサイルが積んでありました。
そうです。ガメは賭けで得たお金を元に自分自身を改造したのです。
やがてガメは人々に別れを告げ、甲羅を回転させながら空高く舞い上がり、飛んで行きました。
そしてガメは飛びながらつぶやきました。
「生まれ変わった事だし、名前を変えよう。ラでもつけるかな。」